「平成30年度 病害虫発生予報第4号」の発表について
農林水産省HPより
向こう1か月の主要な病害虫の発生予察情報(発生予報)については次のとおりです。また、平成30年7月豪雨による大雨の影響があった地域では、病害が発生しやすくなっていることから、ほ場の観察をこまめに行う等、いつも以上に早期発見と適時防除に努めてください。
・水稲では、いもち病(葉いもち)の発生しやすい気象条件となっています。水田の観察を行い、本病の発生状況に応じて、適期に防除を実施してください。
・野菜類では、ねぎのアザミウマ類の発生が北東北及び南関東の一部の地域で多くなると予想されています。ほ場を注意深く観察し、適期に防除を実施してください。
・果樹では、リンゴ黒星病の発生が北海道及び北東北の一部の地域で多くなると予想されています。対策にあっては、り病部の除去、薬剤散布等の防除を実施してください。また、本病はDMI剤に対して耐性菌が発生しているため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に薬剤を選定してください。
発生予察情報について
国は都道府県の協力の下、植物防疫法(昭和25年法律第151号)に基づき、有害動植物の防除を適時で経済的なものにするため、気象、農作物の生育状況、有害動植物の発生調査結果等を分析し、有害動植物の発生動向及び防除対策に係る情報として、発生予察情報を提供しています。
本予報に掲載している情報の詳細は、都道府県病害虫防除所のホームページ等を参照してください。
発生予察について
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/index.html
都道府県病害虫防除所
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/120105_boujosho.html
気象
気象庁の向こう1か月の予報(7月5日付け)では、気温は東・西日本で高く、沖縄・奄美で平年並みか高くなると予想され、降水量は西日本太平洋側で多く、その他の地域で平年並みか多くなると予想されています。
気象庁ホームページ
参照URL:http://www.jma.go.jp/jp/longfcst/001_00.html (外部リンク)
水稲
水稲で各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域
作物名 | 病害虫名 | 発生が「多い」と予想される地域 | 発生が「やや多い」と予想される地域 |
水稲 | いもち病 (葉いもち) |
北海道、北陸、東海、四国 | |
ヒメトビウンカ (縞葉枯病) |
南関東 | 東海、中国、四国 | |
斑点米カメムシ類 | 北陸 | 東北、甲信、中国、南九州 | |
紋枯病 | 南関東、北陸 | 東北、近畿、中国、北九州 |
注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。
・いもち病(葉いもち)の発生が、北海道、北陸、東海及び四国の一部の地域でやや多くなると予想されています。向こう1か月予報では、降水量が全国的に平年並みか多くなると予想されており、断続的な降雨がある場合には本病に感染しやすい条件となるため、急激に発生するおそれがあります。水田の観察を行い、本病の発生状況に応じて適期に防除を実施してください。また、補植用取置き苗は、密生して本病に感染しやすく発生源になりやすいので、放置せずに早期の除去を徹底してください。
なお、一部の薬剤に対して耐性菌が発生しているので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に薬剤を選定してください。
・紋枯病の発生が、南関東及び北陸の一部の地域で多くなると予想されています。本病は、高温多湿条件で発生が助長され、病勢は少しずつ進展していきます。向こう1か月予報では、気温は東・西日本で高く、沖縄・奄美で平年並みか高くなると予想されていることから、今後の発生状況に注意し、適期に防除を実施してください。
野菜・花き
野菜・花きで各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域
作物名 | 病害虫名 | 発生が「多い」と予想される地域 | 発生が「やや多い」と予想される地域 |
いちご | ハダニ類 | 北九州 | 北陸、四国、南九州 |
炭疽病 | 南九州 | 四国 | |
きゅうり | アザミウマ類 | 南関東 | 北陸、四国 |
アブラムシ類 | 北東北、北陸、四国 | ||
トマト | 灰色かび病 | 北陸 | 四国、南九州 |
葉かび病 | 北陸 | 南東北、近畿 | |
ねぎ | アザミウマ類 | 北東北、南関東 | 北陸、近畿、中国 |
野菜共通 | オオタバコガ | 四国 | 甲信、近畿 |
シロイチモジヨトウ | 北陸、四国、北九州 |
注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。
ねぎ
・アザミウマ類の発生が、北東北及び南関東の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は作物を加害するほか、多くの病原ウイルスを媒介することが知られています。発生密度が高くなってからでは防除が困難となるため、ほ場の観察をきめ細かく行うとともに、発生初期に防除を実施してください。
本虫は薬剤抵抗性が発達しやすいので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避ける等薬剤を適切に選定するとともに、薬効が得られるよう均一に散布するように心がけてください。また、薬剤散布のみならず、天敵生物等の各種防除手段を組み合わせた防除の実施についても検討してください。
アブラナ科野菜
・コナガの発生が、北東北及び東海の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は薬剤抵抗性が発達しやすく、ジアミド系の一部の薬剤において、本虫に対する感受性の低下が報告されています。都道府県から発表される発生予察情報等を参考に、各地域において効果の高い薬剤を選定し、適期に均一な散布を実施してください。
果樹
果樹で各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域
作物名 | 病害虫名 | 発生が「多い」と予想される地域 | 発生が「やや多い」と予想される地域 |
なし | シンクイムシ類 | 東海 | 南関東、北九州 |
ハダニ類 | 東海 | 関東、北陸、近畿、北九州 | |
黒星病 | 北東北 | 南東北、南関東、甲信、東海、近畿、中国 | |
もも | せん孔細菌病 | 南東北、甲信、北陸、東海、近畿、中国 | 北東北 |
果樹共通 | 果樹カメムシ類 | 東海、近畿、中国、四国、九州 | 北東北、北陸 |
注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。
りんご
・黒星病の発生が、北海道及び北東北の一部の地域で多くなると予想されており、秋田県からは注意報が発表されています。向こう1か月予報では、降水量が全国的に平年並みかそれ以上となると予想されており、本病の発生に好適な気象条件となることから、今後の発生動向に警戒が必要です。対策にあっては、り病部の除去を確実に行い、薬効が得られるように均一な薬剤散布を実施してください。
また、本病はDMI剤に対して耐性菌が発生しているので、薬剤の選定にあっては、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に適切に選定してください。
かんきつ
・かいよう病の発生が、近畿及び南九州の一部の地域で多くなると予想されており、和歌山県では注意報が発表されています。向こう1か月予報では、降水量が全国的に平年並みか多くなると予想されており、本病の発生に好適な気象条件となることから、発生状況に注意が必要です。
本病は、風やミカンハモグリガの食害による傷口から感染することから、対策にあっては、り病部の除去、防風ネットの設置等の防除を実施するとともに、ミカンハモグリガの防除を実施してください。
・ハダニ類の発生が、東海及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。園内を注意深く観察し、発生状況に応じて防除を実施してください。
なお、本虫は薬剤抵抗性を獲得しやすいので、都道府県の発生予察情報等を参考に同一系統の農薬の連続使用を避けてください。
もも
・せん孔細菌病の発生が、南東北、甲信、北陸、東海、近畿及び中国の一部の地域で多くなると予想されています。本病は、春期に枝に形成された春型枝病斑(スプリングキャンカー)が伝染源となり、降雨や風により葉及び果実へと次々と感染が拡大します。
向こう1か月予報では、全国的に降水量が平年並み以上になると予想されており、本病の発生を助長する気象条件となるため、注意が必要です。
対策にあっては、薬剤による防除を実施するとともに、園内を注意深く観察し、り病部を確実に除去してください。
果樹共通
・果樹カメムシ類の発生が、東海、近畿、中国、四国及び九州の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は、気温の上昇とともに餌を求めて園地に移動し、かんきつ、なし等の果実を加害します。
本虫の飛来状況は地域や園地により異なるので、都道府県の発表する発生予察情報等を参考にしつつ、園内を注意深く観察し、飛来が認められた場合は、飛来初期から防除を実施してください。
茶
・ハマキムシ類の発生が、南関東及び南九州の一部の地域で多くなると予想されています。ハマキムシ類の幼虫は、茶葉をつづり合わせて内部を食害しますが、葉をつづり合わせてからでは薬剤がかかりにくくなるため、ふ化期~若齢幼虫期を対象とした薬剤散布が効果的です。
地域の予察灯やフェロモントラップの誘殺状況を参考にし、前世代成虫の発生最盛日の7日後程度を目安に防除を実施してください。
病害虫防除に関する留意事項
一般
・病害虫の防除を効果的に実施するためには、注意深くほ場観察を行うことにより、病害虫の発生状況を的確に把握することが必要となります。病害虫の発生は天候の影響を大きく受けるので、天気の推移に注意しつつ、各都道府県の防除指針に従い、適期に適切な防除を実施してください。
・薬剤防除を実施する場合は、病害虫が薬剤抵抗性を獲得しないように、同じ作用機作の薬剤の連続使用を避けてください。また、農薬の使用基準を遵守して適切な薬剤を選択するとともに、散布対象外の農作物等に農薬が飛散しないよう対策を講じてください。
露地栽培
・引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。
施設栽培
・ウイルス病を媒介するアザミウマ類、アブラムシ類、コナジラミ類等の侵入や野外への飛び出しを防止するため、施設の開口部に防虫ネットを設置する等の対策を実施してください。また、雑草はこれら害虫の発生源となるので、施設内及び周辺の除草を定期的に行うよう努めてください。引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。
・作物残さは、害虫の発生源となり、り病葉及びり病果は、病害の伝染源となります。栽培終了後は、蒸し込み処理等を行い、作物残さでの生存虫を死滅させてから搬出し、土中に埋める等、確実に処分をしてください。
・施設内が過湿になると、病害の発生が助長されるため、雨水が施設内に入らないように留意するとともに、過度なかん水を回避する、循環扇を設置する、換気を行う、作物の株間の通風を図る等により、施設内が過湿にならないように管理してください。また、病害の早期発見に努め、伝染源となるり病葉及びり病果は除去し、適期に薬剤防除を実施してください。
平成30年7月豪雨による大雨への対応について
平成30年7月豪雨による大雨の影響があった地域においては、本報の一般的な注意事項に加えて、冠水又は浸水、ほ場の過湿等により農作物に病害が発生しやすくなっていることから、天候の推移に注意しつつ、ほ場の観察をこまめに行い、都道府県から今後発表される発生予察情報等を参考に防除の実施に努めてください。
ほ場の観察は、気象情報を十分に確認し、大雨や強風が収まってから行ってください。また、安全に十分に注意し、転落等の事故に遭わないよう、増水した水路等の危険な場所には近づかないようにしてください。
一般的な注意事項に加えて特に留意すべき事項
【水稲】
浸水、冠水被害を受けたほ場では、速やかな排水に努め、今後の気象状況や生育状況に注意し、必要な場合は白葉枯病等の病害に対する防除を適切に行うこと。
【大豆】
浸水、冠水被害を受けたほ場では、生育遅延や根腐れを引き起こし、病害に対する抵抗力が弱まるため、速やかな排水に努めること。
【野菜】
浸水、冠水被害を受けたほ場では、速やかな排水に努め、今後の気象状況や生育状況に注意し、軟腐病等の病害の発生を防止するため、折損した茎葉の除去と薬剤散布を適切に行うこと。
【果樹】
かんきつ類のかいよう病、りんご及びなしの黒星病、もものせん孔細菌病等の病害が発生しやすい状況となっていることから、園内の排水や通風改善に努めるとともに、折損した枝、り病葉及びり病果の除去に努めること。また、早期に追加の薬剤散布を実施するなど、更なる病害の発生抑止に向けた対策に努めること。
【茶】
葉が損傷を受けている場合は、赤焼病等の病害の発生を防止するため、薬剤散布を適切に行うこと。
なお、「平成30年7月豪雨」に伴う農作物等の被害防止に向けた技術指導の徹底について(平成30年7月11日付消費・安全局農産安全管理課長・植物防疫課長等通知)を発出しているので、併せて参照してください。
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/gijyutu_sido.html
用語解説
(発生量(程度))
多い(高い):やや多いの外側10%の度数の入る幅
やや多い(やや高い):平年並の外側20%の度数の入る幅
平年並:平年値を中心として40%の度数の入る幅
やや少ない(やや低い):平年並の外側20%の度数の入る幅
少ない(低い):やや少ないの外側10%の度数の入る幅
(平年値は過去10年間の平均)
(参考)
今後の発表予定日
第5号:7月25日(水曜日)
第6号:8月8日(水曜日)
第7号:9月12日(水曜日)
第8号:10月17日(水曜日)
第9号:11月14日(水曜日)
第10号:平成31年2月13日(水曜日)
お問合せ先
農林水産省
消費・安全局植物防疫課
担当者:国内防除第2班 白石、渡邉
代表:03-3502-8111(内線4562)
ダイヤルイン:03-3502-3382
FAX番号:03-3502-3386